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「世界の果てで待っていて〜嘘とナイフ」 高遠琉加/茶屋町勝呂

「黒澤銃一郎の行確を行う」

渋谷区神泉に調査探偵事務所を構える黒澤銃一郎は、暑い夏の午後、元同僚で渋谷警察署の刑事である櫂谷雪人から呼び出される。
補導されたある少年が、黒澤の名刺を持っている、と。それが新たな事件の始まりだった・・・!
妹である澪子の死の真相を独り探り続ける黒澤。そんな黒澤に、雪人は自分の知らない影を見つけ動揺する。
自分はあの男の何を知っていて、何を知らないのか・・・。そんな雪人は、公安の鴉と呼ばれていた鷹取から銃一郎の行確を命じられ…。
一夜の記憶を封じたふたりの想い、そして見失った真実の行方は。

不確かで曖昧極まりないあちらとこちらの世界の境界、その揺らぎを見つめる作品。
前作「〜天使の傷痕」から数年、もう出ないかも…と思っていたまさかの作品がパワーアップして帰ってまいりました。           
読んだ後しばらく放心してしまいました。ここまでとは思わなかった…。傑作です。

「80年後文学作品」、これはなるかもしれない…。
警察小説がこの作家様の得意分野とは思えません。それでこれだけのクオリティって、いったいどこまでいけるのでしょうか、このお方は。


  ◆イラストチェック/茶屋町勝呂(アート派)                            
カラー★★★☆ カット★★★★☆
今作のイラストが、前ご担当絵師様・雪舟画聖とあまりに違うテイストでありながら違和感がさほどないのは、茶屋町画伯の個性である潔い「白」と「黒」に作中の「純白」と暗転した「黒」が共鳴しているからでございます。(1作目の「淡藤色」ではかなり辛かったことでしょう。)
これは絵師様の意図的な狙い、だからトーンも使わずナイフで削ったようなエッジのきいた白と黒だけでカットを描かれたのですよね。
本当は表紙もモノトーンにしたかったと思うな。うむ、素晴らしい。

2011年BLグラミー・イラスト部門 ベストモノクロ賞候補に当初は入れておりました。
外したのは今作のもう一つの重要要素・「恋愛」の萌え力が弱く、ドラマとミステリー色が強まるタッチになっている=境界線がくっきりしすぎるのが少々残念だったからです。画伯ランクともなれば期待のハードルも高いのですよ

◆本編感想                                                
わたくしが最も惹かれる高遠作品の魅力は、ズバリ「美しさ」でございます。

それは文章表現だったり、緻密な構成だったり、人(ドラマ)そのものだったりいたしますが、今作もそれらの魅力は欠けたることなく、演出魂をくすぐる鮮やかな色彩(映像美)が加わってさらなる美しさです。←今回初めて加わったわけではないが最高級に美しいってことね
でもって、近年の高遠作品の美しさには「色」と「花」が欠かせないのですね。例えば…。

「楽園改造計画」…パレットカラー=色見本(色彩は四季彩ともあてられる) 花は桜
「愛と混乱のレストラン」…トリコロール・青→白→赤、花はオールドフレンチローズ
「甘い生活」…キャメル(キャラメルとミルクチョコの色、じじ色) 花は果樹(林檎やベリー類)
「ホテル・ラヴィアン・ローズ」…タイトルにズバリ薔薇、色は赤(スタンダード)と青(スペシャル)
「成澤准教授の最後の恋」…水(雨)色 花はリラ(ライラック)
「〜天使の傷跡」…あの一夜の淡藤(色)
「〜嘘とナイフ」…鷺草の純白

新作を拝見するたび、こうやって美しさを確認・堪能するのが好きなのです。
こうして見ると薄紅(赤)・薄紫(青)・白が高遠さんのお好きな色みたい。だからフランスにいわくのある作品が多いのかな。
                           

「全高遠作品中今作が一番好きだ」と某所コメントで断言するほどこの作品に惹かれたのは、今作の色と花がただ美しいだけではなく、作品に見事に融けている=単なる象徴で終わっていないからでございます。

若さが萌えぐ青い春の後にやってくるのは朱夏です。作中の季節はいつも夏=人生における上り坂・最も熱く光濃い季節、落とす影もまた濃いのです。
鷺草の白は息をのむほどの純白です。この花を手にした黒澤は、亡き妹に手向けるために精一杯急いだに違いありません。己の闇が純白を侵してしまわぬうちに。<この時のイラストの表情は素晴らしいと思う

法の正義と心の正義。嘘の中の真実。真実の中の嘘。
あちらの果てとこちらの果てを決定するのはあまりに淡い境界線、世界は灼熱が生み出す陽炎のようなうたかたです。

そして曖昧を嫌うがごとく、天使にくっきりとついた傷。
傷つけたのは誰の嘘?それともナイフ?
尋ね人は果たして見つかるでしょうか。見つかるとしたらどこで?
此岸?それとも彼岸?

緊張と憂いを纏う文章が花香のごとく匂い、過去・現在・未来と個人・社会・世界を縦横に重ねた構成は繊細な花弁のごとし、そして蕾がほころぶように秘めた想いは零れます。
う〜ん、なんと見事な花を咲かせてくれるのか。たまりませんね。

これらのことから鑑みるに、次回は晩夏の彼岸花(深紅)が来そうだが…。
今度は前回ほど期間はあかないと思うけど、果たしてどうでしょう。

                           
                         
完全独立作として読んでも面白いですが、前作「〜天使の傷跡」の精神を随所に受け継いでいるのがこれまたお見事です。(恋愛や事件の伏線だけではなく、をつけたのはナイフかってとこね、前作のキャラにも今回登場するキャラすべてにもこの問いを投げかけることができます。上手すぎ!次作のサブタイトルも注目です)

広げた翼をどのように納めて下さるのか、下手にBLセオリーなど意識せず、思いのまま羽ばたいて素敵な世界の果てに連れて行ってほしいと心の底から楽しみにしています。




※「BLグラミー2011長編部門」感想から独立&再構成いたしました。

 

                                                         
                                                           〔絵師:茶屋町勝呂〕〔カット:★★★★☆〕


                            

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[小説・作家名た行]高遠琉加 | comments(1) | - |

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Comments

■ゆOO様
そうなの。これもまた生殺し☆
読み始めたが最後、続きが欲しくて悶絶します。わかっているのに読んでしまうガマンの利かないわたくし…。
新刊ももちろん読んじゃいました。でもってモリモリ感想書いちゃいました。さっきあげました(苦笑)
そこでも書いてますが、新刊感想の一環としてこの記事を独立させたのね、改めて読んで下さってありがとう♪♪

おっしゃるように最近シリーズ化が多くって、色々と試されちゃって困っちゃいます〜、T崎さんのアレなんてまさかシリーズモノと思わなかったよね!シャレードのT崎さんはとてつもなく長いので、今後がまぢコワいです(笑)

comment by: miru−ha | 2011/12/04 20:41

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