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「遠くにいる人」 ひのもとうみ/松尾マアタ

家具工場に勤める佐倉治樹は、本社から移動してきた上司の小田島達朗に恋をした。彼の素行の悪さを知る治樹の幼馴染は、小田島だけは止めておけと何度も言うが、地味な治樹にとって華やかな小田島は憧れずにはいられない存在だった。そして小田島はなぜか事あるごとに治樹をかまい、特別な優しさを向けてくる。期待してはいけないと思いつつ、治樹はその幸せを受け入れはじめるのだが…。
※こちら、読後すぐ(5月頃)書き始め、推敲を重ねたものの結局ボツにした感想なのですが、内容が「グラミー賞(年間ベスト)」と若干絡んでいるため、今さらながらUPいたします。
メインボツ理由となった暑苦しい本編感想は出来るだけ薄目で通り過ぎ、イラストチェックとイメソンだけお目通しいただければ幸いです。

皆様、こんばんは。
本日は、miru-ha認定☆新ご三家作家様より、ひのもとうみさん「遠くにいる人」感想をお送りします。今年はは新人様の当たり年だと常々申しておりますが、この方もそのお1人でございましょう。わたくしの中では、ひのもとうみさん、宮勸さん、風見香帆さんが、新人様三雄=新ご三家認定作家様となりました。
※参考…前ご三家(2008〜9年頃のマイツボ新人様) 敬称略
・海野幸    ・玉木ゆら     ・凪良ゆう


ステキな表紙絵に惹かれ手にとったものの、中身はさほどでも…という経験は、腐女子ながら少なからず覚えのあることでございましょう。でもこれはイラストの力に負けない、読み応えある作品でございました。 

新刊ではないのでネタバレを気にせず書いておりますが、事前に知ってしまうと面白み半減ネタもございます。未読のお客様はお気をつけ下さいませね。



  ◆イラストチェック/松尾マアタ(コミック派)                            
カラー★★★★★ カット★★★★
今回はカラーとカットをご一緒に、というより、表紙絵の素晴らしさについて熱く描かせていただきます。

このイラストはなかなかの衝撃でした。
作品の顔ともいえる表紙絵で、画面半分をコンクリート壁(=薄暗い単色)で占めた上、人物を紙面の中心に置かず、かつ描かれた人物は後ろ姿と横顔。なんと斬新!

濃灰色の持つ陰鬱で寂しいイメージは、エゴ、嫉妬、不安、疑惑など、人を恋う心の暗部を思い起こさせます。そして灰色と相性のいい「薔薇色」の対比により、恋の持つ「明」のイメージ、甘さ、夢、思いやり、ひと肌の温もりかさなどが一層柔らかく際立ちます。
「夕陽」ならもっと朱を利かせてもいいところをあえての薔薇色、補色効果を最大限に生かした素晴らしいカラーセンスです。

これが並ぶ平台を想像してみます。
色と艶のワンダーランド☆腐界の新刊平台で、明暗ですっぱり2分割された潔いイラストに、思わず目を奪われますよね?そして手にとって、すっきり描かれた人物画に目を転じる。すると薄笑して通り過ぎる攻めと縋るように後ろ姿を見つめる受から、どうやら人でなし×ウジウジクンのドラマチックラブストーリーかな?と見当がつく。

思わず目を奪われる=買い手の視線を捕らえることが、表紙イラストの最たるお仕事です。
見当がつく=イラストだけで買い手に作品世界観を伝えるのも、重要なお仕事です。
この作品は新人作家様の初商業作品なので、作家買いはほぼ期待できない。さらに言えば、絵師様自身も知る人ぞ知る…ぐらいの知名度なので、絵師買いもさほど誘えない。
つまりこの表紙絵は、絵の魅力だけで表紙買いを誘発できる、イラストとして最高のお仕事と言えるのでございます。

このイラストは雑誌掲載カラー扉絵の転用とのことですが、もし初めから「表紙絵」を意識して描いていたら、このような構図は決して取れなかったでしょう。(「表紙」を飾るイラストを描こうと思う時にできる発想と勇気ではないから←イラストを描くものなら分かる感覚です) 
口絵に再収録するのではなく、描き下ろし画とするのでもなく、このイラストを表紙画に起用した出版社側の英断に拍手でございます。

でもってこの絵には、もう一つ隠れた面白さがあるのでございますね。それは本編感想で☆
 
カットも丁寧です。絵師様が楽しまれてお仕事されているのが伝わってくるイラストです。
でもって最後の1枚には、コーヒー吹きました(見れば分かる) このショーゲキのために、これまでの品良い美しさがあったのか…!このォ、テクニシャンめっ☆
                  

◆本編感想                                                     
おもしろいよなぁ…。

わたくし、このお話に出てくるメインキャラ、治樹・小田島・ミツ、3人の誰ひとりとして、好きか嫌いかと問われたら嫌いです。←実際は嫌いなどという強い感情ではなく、好きになれん程度ね

容姿に自信のない人間が行きずりのオトコと遊べるという、受・治樹の不自然な大胆さがどうも理解できないし、立派な社会人でありながらプライベート(色恋とコンプレックス)を職場(仕事)に反映させ過ぎなのも気になります。
攻・小田島の嫌悪ギリギリの勝ち組思考は、家具会社の御曹司というよりアラブだし(笑)、親友だ心配だと照れなく口にするイケメン幼馴染・ミツも、リアル感に欠けると感じてしまう。(欧米人じゃあるまいし、「友情」を言葉で確認されるムズがゆさに慣れないっていうか…)
小田島の底意地の悪さはものの数ページですぐ分かるし、小田島の狙いが実はミツで、治樹は単なるダシ扱いという、他BLなら延々ひっぱるようなストーリーのキモも、展開序盤で早々にバラされます。

にもかかわらず、このお話は面白かったのです。

わざわざ危険領域に踏み込んでは運試しのように男を試して、「あぁ、今回もダメだった…やっぱりオレはブサイクだから、酷い目にあっても仕方ないんだな…」と意味のわからないブサイク確認をし続けている治樹は、まるでブサイクではないとの答えが出るのを恐れているようです。
どうしてこんな自虐的な自分探しを続けるのかよく分からんが、それほど彼にとっては「容姿(の美醜判定)」が自我=自己の中心にあるのでしょう。 
でもって、行きずりオトコと云々する心理は理解できなくても、憧れた人に声を掛けられて舞い上がる治樹の気持ちはとてもよく分かるし、高く舞い上がれば上がるほど、叩きつけられた時の痛さも想像してあまりあります。治樹を傷つけた小田島のセリフは容赦なく辛辣で、治樹にさほど思い入れのないわたくしでも胸が痛いです。

さらに小田島が幼馴染のミツに惹かれる理由は「美しいものが好きだから」という、自己努力ではどうにもならない、かつ病的ブサイク確認をし続ける治樹にとっては最も辛い理由です。
おまけに小田島は残酷で、治樹の好意を早々に見抜いてる&応えるつもりなどさらさらないのに治樹をわざわざ煽ります。こんなえげつない奴どっかで痛い目にあうだろうと思うのに、最後まで彼に天罰は下されず、痛い目に合い続けるのは治樹だけです。
本人がブサイクだと思いこんでるだけで実はイケてるとか、ブサイクだけど気立てがいいとか、そういった救いも一切用意しない、作者様の開き直った筆に感心してしまいます。←幼馴染に若干フォローさせてますが、親友のひいき目とも取れる=救いの決定打にならない

でもってこの作者様は、救いのないヒロインにほだされて改心する攻…などという可愛らしい話の締め方を選ばないのだよね。選ばないのに、可愛らしい締めになっているんだな、これがまた。
物語の冒頭と少しも変わらず、どこまでもオレ流でしか物事を見ないまま、つまり小田島は最後まで素のまま思いのまま(笑)、歪んだ傲慢さを可愛らしさにまで昇華させ、この恋を成就させてしまうのですね〜。

読み終わってみれば、主役が交代しておりました。
コンプレックスの塊・うじうじ治樹の心の雪融けラブストーリー…とも取れますが、このままいけば間違いなく誰かに刺される、傲慢自己中王子・小田島の救済ラブストーリーになっていた…。

小田島や治樹が扱う「家具」は、傷やゆがみが重なれば欠陥品と呼ばれますが、傷ついた人と歪んだ人が求めあって生まれるものは、欠陥ではありません。きっとこの2人は、性格上の欠点も多難な条件(世間体とか社会的信用差とか見た目バランス)もそのまま=灰色ながら、それでも彼らなりに薔薇色な恋を謳歌していくんでしょう。

そう思って表紙を観ると、本編を読む前とはちょっと違って感じられます。
治樹の一方通行の思いが強く伝わってきた読前印象=片思い中イラストに思えましたが、読後だと、後で可愛がって上げるからね、という小田島のオレ様愛(プレイ?)が生みだす笑み=恋愛成就後とも感じられてくる。
つまり本編もイラストも、(視点切替えに頼らず)解釈次第で主役が交代できるのです。これは、受=疑似女性=ヒロイン中心のファンタジーであるBL世界では大変稀有なことでございます。←イラストチェックで触れた「隠れた面白さ」とはこのことね
本編を書いた作家様も、イラストを描いた絵師様も素晴らしいが、これを表紙に起用した出版社様に読後いっそう感心いたしました。トレビアン☆      
                     

ラスト数ページの、小田島と治樹のちょっと変わった盛り上がりが、これまた楽しいです。
ここでのやり取りはお互いへの愛の告白と同時に、自身に芽生えた恋心の確認作業でもあるので、自ら発したセリフに自分自身が凹んだり、納得したり、それを見た相手がこれまた凹んだり、納得したりと、ようやっと手を取り合うまでが長い長い(笑) 
こんだけ焦らされた後のHはそりゃ盛り上がるよ、小田島のクセのあるセリフまわしが場を一層盛り上げてくれます。

こうしてみると、この作品は会話に刮目する当世恋愛作品だったんだなあ。
社交辞令、立ち聞き、嘘から始まって、口説き、謝罪、告白…。
小田島とミツの会話が、口説きから恋愛相談へ=恋愛から友情へと無意識に移行していく様も面白いし、最終的にはミツに恋路を邪魔された被害者…的愚痴まで飛び出す小田島は、なんかもうアッパレです。
あれだけのセリフを(作家)脳内で練るとは、小田島の性格設定の深さがこの作品の一番の勝因でございましょう。                            
                             

個人的にちともったいないと感じたのは、このキャラ&ストーリーなら、治樹とミツは女性である方がよりダイレクトに作品のテーマが伝わったのではないかと思われたことかな。

女を男に置き変えただけの身代わりBLはわたくしが最もがっかりする類ですが、そういう意味ではなく、このままでも充分読み応えはありますが、この作品・この人間像を通して作者様が訴えたい(とわたくしが感じた)ことは男女の間で起きるほうがより理解できるし、魅せる夢もまた大きい気がするのだね。
小田島の選ぶデートコースが、あまりに女子好みのステレオコース(夜景の綺麗なフレンチレストラン、水族館、高級旅館でサプライズ)なので余計にそう感じるのかもしれません。
いくら恋愛対象とはいえ、ぬいぐるみを男子に買っちゃうナナメなマメ発想がすごい。捨てゴマでもいいから、わたくしもエスコートしてほしいよ(笑)

(安易に)女性に置き変えられちゃうのでつまらない、とこれまで書いたことはあっても、女性に置き換えたものも読んでみたい、と感想に書くのは初めてでございます。己の生み出す世界に溺れず、「人」をしかと見つめるからこそ、性別を凌駕することができるのでございましょう。

2作目、3作目がとても楽しみです。
量産タイプの方ではなかろうと思いますが、BLというより恋愛小説を書いているスタンスで、このまま創作を続けていっていただきたいです。応援してるぅ♪



◆本日のイメソン                                             
「声にならなくて」 松下優也
            

何故か合わせることない目と目 
それぞれ抱えてるこの想いが擦れ違い 隣りでも 遠い距離感

スタイリッシュなイラスト、クールな筆運びに合わせたチョイスでございます。
ダンサブルバラードなんて、多方面において実力がないとできません。努力を知っている若さほど怖いものはないよね〜。




                                       〔絵師:松尾マアタ〕〔カラー:★★★★★〕〔カット:★★★★〕
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    [小説・作家名は行]ひのもとうみ | comments(4) | - |

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    Comments

    いつも楽しみにして読ませていただいています。今日は、電子書籍で、先ほど読み終えたばかりの本の感想が上がっていたので、興奮してお邪魔してしまいました。こんな表紙絵だったんですね、惜しいことしました。(最後の一枚はどんなだったんだろ?立ち読みでチェックしようかしら)
    miru−haさまの書評やイラストチェックは私の好みにドンぴしゃで、いつも「そうよね〜。」と一人つぶやきながら、楽しませていただいております。とくに崎谷作品の感想や好みの順番など、「一緒、いっしょー」と小躍りしました。(もちろん脳内で)
    こちらが更新されているかどうかチェックするのは、私の楽しみの一つです。たいへんな努力と苦労があると思いますが、応援しています。
    comment by: yako | 2012/01/09 15:27
    ■かOO様
    わはは、HNとご本名では馬力が全然違うのですね(笑)でも、どちらも立派な「船」ではないですか、わたくしなんて白鳥の船と折り紙船だよ?σ(^_^;) 飛べない豚も浮かばない船も、ただのブタでございますよ☆

    >七つの腐海
    一応、腐海名?があるのでございますよ♪
    「小説の海」「マンガの海」「イラストの海」「イメソン(妄想)の海」「同人・小冊子の海」「BLCDの海」「BLゲームの海」が七つの大海、他「アニメ」「声優様」「ニア」「二次創作」などなどの海がございます。
    でもってmiru-ha号が根城?としておりますのは、「小説の海」「イラストの海」「イメソン(妄想)の海」「マンガの海かな、最深度を誇る「同人の海」は最近船出したばかり、たま〜に「BLCD海」をチラ見して、「BLゲームの海」は未踏でございます。海は広いな、大きいな☆

    こんなおバカなことを思いつく秘訣…自分でもよく分からんのですが、マジガチとおバカは紙一重だと感想書いてるとよく思います。倒し方が違うだけで切り口は一緒っていうか、俳句と川柳のような関係というか…
    ん?そんな高尚なことか、コレ?σ(^_^;) 

    >掛け声
    わははは、ありがとうありがとう!「ち」が最高にツボりました!明らかにくねり腰&小指が立ってますね(プッ)
    でもって100年早いって、400年も経った今なら兄貴に勝てちゃうじゃないの(笑)

    >BSR総選挙
    今日が締めきりだったんですね、結果発表気になりますね!
    特設サイトの公約PVは笑ったよ、えちごづかって…わはははは!思わず謙信様に1票入れたくなりました。
    あのPVの声優さんはどなたなのでしょう、すご腕さんですね♪

    地下庭園でのお話はもう少々お時間くださいませ、ごめんなさい…
    comment by: miru-ha | 2012/01/10 22:35
    ■みOO様
    やっぱりみOO様もそう思われましたか!<小田島のデートコース
    狙ったのかどうかよく分からんが、ベタですよね(笑)

    >2作目
    ステキ情報ありがとうございます♪この感想は2作目が出る前に書いてあって今回そのまま上げちゃったんですが、その後2作目も無事読了いたしてましてございます。
    あまり内容覚えてないんですが、おっしゃる通り小田島の存在感の方が上だったような(笑)
    お恥ずかしいことにHさんのアレがツボらなかったものですからその続編は読まなかったため、類似については影響なしで楽しめた気がします。

    器の小さい攻様を書くのが得意な方ってことになるのかな。3作目、4作目もこの路線で行けるかどうか難しいところですね〜。だからこそ安易に方向転換しないで、このままがんばってほしいのですよね。作家様の引き出しに期待です♪

    もちろんわたくしも、3作目も買わせていただきますです♪
    comment by: miru−ha | 2012/01/10 23:01
    ■yako様
    嬉しいお言葉、本当に本当にありがとうございます〜っ♪
    お恥ずかしい稚拙で激ナガ(最悪だな…)感想にイメージソングなる謎のフィーリングパーツまでつけちゃって、初めて遊びに来て下さった方は速攻逃げ出すよな、このブログ…(大汗)、ドエラい時間かけても大したこと書けないし、そもそも読んで下さる方いるのかしら…、などと毎度ビクビクしながら記事をUPするわたくしにとって、yako様からいただいたお言葉は救いでございます。
    待ってて下さってありがとう、読んで下さってありがとう♪

    >電子書籍
    近頃増殖激しい本の山をみる度、電子図書の魅力を噛みしめるのですが、わたくし少々紙フェチの気がありましてやっぱり紙媒体を選んでしまうのです…。そして山は連峰となる…

    マアタさんイラスト、ステキでしたよ〜♪口絵もいいんです。え、ここ?なシーンで(笑)
    でもって「最後の1枚」を効果的に楽しむために、どうぞ1枚目から順に見ていって下さいませ。そうするとラストでギャッ☆となるのでございます。小田島がとっても嬉しそうでねぇ(笑)

    >崎谷作品
    あの激ナガも読んで下さいましたか、ありがとうございます!ではではyako様のベストはるひんも「ANSWER」「SUGGESTION」でございますですね♪
    あれは名作ですよね〜、感想語りにくいけども。



    記事の更新はもとよりコメントお礼も遅れまくりの情けない我が家ですが、どうか今後ともよろしくお願いいたしますです。

    comment by: miru−ha | 2012/01/10 23:55

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