スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

 

励みになります、ありがとうございます♪ 拍手する
- | - | - |

「恋ひめやも」 英田サキ/小山田あみ

「師」とは程遠い存在の私でも、12月には忙しい忙しい、と走っている。

いただいたお気持ちへのお礼も満足に言えない日々なのに、自分の書きたい気持ちを優先させて新作感想など書いている、この人でなしめ!と自責の念にかられながら、それでもこの本の感想を書きたい衝動が収まらない。
書くこと自体は楽しいけれど、最近「書きたい!」と思えるBL(特に新刊)になかなか出合えないな、慣れてきちゃったのかな…などと思う頃、こうやってマジガチで向き合いたい名作に巡り合う。
まだまだ枯れるのは早い、と誰かに言われているかのごとく(笑)


明日からの仕事もきっとキツイだろう…。でも書こうと思う。
巨匠の名作に敬意を表して。


英田サキさん×キャラ文庫と言えば、泣く子も黙る?「DEADLOCK」シリーズがある。
まさかのムショ舞台や猟奇な事件、「らしい」人種描写、適度なハーレクイン、ハリウッドスケールの陰謀(良くも悪くも、笑)、まさに私たちのイメージする「アメリカ」とBLの見事な融合。
素晴らしい絵師様との相乗効果で もはや伝説の名作だ。(と、私は思っている)

投稿時代からハードな作品が多く(←投稿時代をご存知の方からおしえていただいた、F様ありがとう!)デビュー作もヤクザもの。他レーベルでもヤクザはもちろん刑事、探偵、殺し屋などなどBLアングラ界で一大ワールドを形成、他の追随を許さない半面、非アングラ作品にあまり当たりがない、というのが作者様に対する私の印象だった。

タイトルからして明らかにアングラ作品ではない今回の新刊を買ったのは、大ヒット作「DEADROCK」の後にどんな世界を描くのか単に興味があっただけで、正直期待はさほどなかったのだが、今となってはこの物見高いおばちゃん根性を褒めてやりたい気持ちでいっぱいだ。
先月出た、とある巨匠の「初恋」作品で感じた物足りなさ、こうだったらよかったな、ここがちょっとな〜、と感じた部分がまさにそのまま修正、いや、より昇華された完成品に出会ってしまったのだから。


元教え子と高校教師。
教え子はとあるきっかけで教師と再会し、気になり、恋を自覚する。

ベタとも言えるこの流れが、実に巧みで自然だ。在校当時は気にならなかったことがどんどん思い出され、結果、当時の複雑な状況まで明らかになっていく展開も唸るほどスムーズ。
作者様が作品を書く上で最も意識した「現実」が、隅々まで徹底的にいきわたっている。

同性同士で、しかも元教え子と教師で、年の差も社会的立場もすべて不安、どちらも悩むのは当たり前だ。
しかし作者様がこの作品で描きたいのはこの2人の特殊性ではなく「悩み」の本質、「恋」にまつわる感情のあれこれなのである。

「意識」の自覚
「自覚」への戸惑い、
「告白」の勇気、
「勇気」の代償である幸せ、
「未来」への不安、

どれをとっても、誰もが覚えのある感情だろう。

奇をてらわず普通の日常生活の中で、真っ向から見つめた「恋心」
この世にごまんといるカップル、他人が見ても区別がつかないが、当人にとっては一つ一つが特別でかけがえない。
大変失礼ながら、この「特別で平凡」な初恋を見事に描いて下さる作家様が英田さんであった事に本当に驚いた。(実を言うと、私は先に触れた巨匠にこれを期待していたがあまりに「特別で特殊」な初恋だったため、少々がっかりしたのだった。)


「特別で平凡」な恋心を真摯に描くのは切ない系BLならなんでもそうだろう、と言えなくもない。
が、ここで「巨匠」であることが生きてくる。
「規矩作法守りつくして破るとも 離るるとても本(もと)を忘るな」、という利休の有名な言葉がある。
いわゆる「守・破・離」、芸事や仕事もこの心構えで臨め、とされる「道」を極める基本だ。
型を守り、型を破り、やがて型を離れ個性を確立する。でも基本を忘れるような自惚れはあってはならない、の意だと私は解釈している。
今回英田さんが描いた「恋心」はまさに「離」まで到達した後の基本への回帰、文章力・構成・設定・心理描写、どれも一流だ。

7年もの空白がこの2人には(と、当て馬さんには、笑)必要だったと素直に思える、技ありの展開。
悩みまくった受けにうんざりする事もなく、諦めない攻めに「想像の産物」を意識する事もない。
「教師」に理想を押し付けず、「優等生」に正義を貫かせない。
男でも女でも関係なく、打算も計算もしっかり書く。でも不快になるまでにはしない。
緩いながらも絶妙な起伏を折り込んで、魅せ場と引き際を心得たプロのバランス感覚に脱帽する。

国語教師である設定も必然、タイトルから浮かぶ歌まで素晴らしい。
懐かしげな「僕」の一人称もこの作品には合っている。


こんな作品が書ける方だったとは…。
アングラ作品しか傑作がないと思っていた、自分の見る眼のなさがかなり恥ずかしい。
申し訳ありませんでした!と頭を下げつつ、徹夜でマジガチ感想を書いたがこれで許してもらえるだろうか。



地味めな作品は読者様のニーズに背いている…。
(後がきより)
先生、そんなことはございません。
地味…かもしれませんがこれは「いぶし銀」の美しさ、輝くシルバーをあえて古美に仕上げた手間の掛かった芸術品です。
私はいぶし銀、大好きです。








通常モードのイラストチェックとイメソンは次ページで。

  今頃ナンですが、新刊ですのでまずはあらすじから…
◆本編あらすじ
「想うだけでいいから、先生を好きなことを許してほしい」
結婚目前で参加した高校の同窓会で、担任教師の水原と再会した棚橋。昔の地味な印象とは裏腹に艶めく笑顔の水原に、急速に惹かれていく。恋人より今は先生と一緒にいたい…。
けれど、ある日突然「もう家に来るな」と拒絶され!?今ならまだ引き返せる、なのに想いを断ち切れない―執着も嫉妬も肉欲も、初めて知った真実の恋←この作品に「肉欲」はあんまりです(笑)
◎イラストチェック/小山田あみ(コミック派マスター→挿絵マスター)
カラー★★★★☆4.5
 イラストチェック初登場、小山田あみさん♪

挿絵マスター認定絵師様なのになかなか作品感想を書く機会がなく、少々ジレジレしていましたので今回は本壊を遂げた気持ちです(笑)
一見アート派に思えるほど硬派でデッサン力のある絵柄、高階佑さんを思わせる絵師様ですが、高階さんと違って小山田さんはコミック派なんですよね。だから絵柄は同じ系統でも、表情と画面構成が全然違うのです。

奇しくも巨匠の手になる「初恋」作品を2本続けてご担当されており、そちらでは新書サイズで13枚!という大盤振る舞いでした。
今回は文庫サイズでカット8枚、カラー絵が表紙を入れて3枚、この2冊でちょっとした「小山田あみ作品集」のテイです。
あまりに豪華でウキウキしたので、2冊まとめてイラストチェックしようかと思ったのですが諸事情で断念しました(笑)

絵師様の全作品を知っているわけではないのであくまで私の印象ですが、硬派なお絵柄から、ハードかシリアスな作品をご担当されることが多いと思います。なので攻めはいつもキツ目のいい男なのですね。
でも今回はどちらが受けでも構わないような優しげな男子が2人です。珍しい〜♪

しかも表紙絵でお分かりの通り、2人はこんなに近くにいるのに触れあうどころかお互いを見てもいないのです。これがBL界でどれほど異色な事か…。
相手が見えない寂しさと、見えないからこそさらけ出せる心。戸板一枚が2人の妨げでもあり、救いでもあるのです。
渇望と拒絶。まさしく「我、恋ひめやも」、反語の世界です。
作品コンセプトをしっかり理解したうえでの1枚。スバラシイ!

口絵その1、180越えのイケメン眼鏡クンと168前後のちっちゃめゆるふわ男子がホントにこんな風に手を繋いで歩いているのを目撃したら、思わず写メしてしまいそうです(どこに?)
音なく散る夜の桜。2人だけが知る幽玄の時。ううむ…、これじゃ恋に落ちちゃうわねぇ…。 
タイトルは、「 しずこころなく花の散るらむ」でいかがでしょう。

口絵その2、こちらは「乱れそめにし 我ならなくに」かな。どんなシーンかはご想像にお任せ♪

カット★★★★4.0
優しげな男子2人によるハニカミカットの連続。
P52の攻めクンの視線…きっと脳内桃色なんだろうな〜、でもこの表情かい(笑)、などと楽しい想像が出来るナイスカット♪
P135、本来ポロポロと泣く受けはとてつもなくウザいと思うのに(行為中は別です←おい!)、この人、このカットは許せました。
泣いて心情を吐露するシーンが早く来ないかとソワソワしながら読んでいたのに、泣くには泣くが決して本心は打ち明けない、強がって流す涙なんだもんなあ…。ここでも反語です。

ラストカットも極上。
英田さんの抒情的なシーン描写と共にうっかりじんわり来てしまいましたよ…。

「桜も見たし、海も見たし、月も見たし、星も見たし」

この飾り気のないセリフ(攻めの性格がよく出ていて素晴らしいと思う)の後に続くであろう言葉を考えると、このラストカットがクルんです、イロイロと!
本編感想で「国語教師が必然」と申し上げました理由、伝わりましたでしょうか。


★4.5つけたかったですが、コミック派ゆえのコマ割りカットが多用され過ぎ、せっかくの麗しいお顔UPが見慣れてきちゃうのが惜しいって事で★4です。


◎イメージソング

 「人待雲」 熊谷育美
http://www.youtube.com/watch?v=k7LK1hs6YhM
 ↑埋め込み画像がなかったので、こちらへ飛んで聴いてみて下さいませ。

美しい日本語と哀愁の旋律にこだわって選んでみました。

貴方の背も見ず、振り返らなかったのは
張り裂けてしまいそうな胸が 悟られてしまわぬよう

まさに表紙絵の世界ですぅ。



                                      〔絵師:小山田あみ〕〔カラー:★★★★☆〕〔カット:★★★★〕


励みになります、ありがとうございます♪ 拍手する
[小説・作家名あ行]英田サキ | comments(3) | trackbacks(1) |

スポンサーサイト

 

励みになります、ありがとうございます♪ 拍手する
- | - | - |
<<prev entry | main | next entry>>

Comments

こんにちは。
これが私の初英田作品になりました。

やっとブログ更新熱も上がったので、はりきって感想書いたら一部内容がかぶって…w
でもそこが一番言いたいとこだったんで、そのままにしてあります。

>打算も計算もしっかり書く。でも不快になるまでにはしない。

ここ、激しく同意です!
恋に打算も計算もつきものだから書かないと嘘なんだけど、さじ加減が不快に傾くBLって多くて…(特に女性との関係とポイ捨てwの表現で)

英田さんのハード系作品未体験だから、どのシリーズから手を付けようかワクワクします〜。
comment by: わにこ | 2009/12/08 12:37
わにこさん、いらっしゃいませ〜♪

更新愛(?)を再燃させるほどの作品が初アイダなんて、素敵じゃありませんか♪

これをきっかけにアングラ作品群もガシガシいっちゃって〜♪&語りに来て〜♪

>恋に打算も計算もつきものだから書かないと嘘なんだけど、さじ加減が不快に傾くBLって多くて…

まったくもって同感です。
打算や計算にいたるまでの心の機微を丁寧に追う事と、グジグジウジウジをエンエン書き続けるのは違うのよ?とOO先生やOO先生作品につい言いたくなってしまいます。


>女性との関係とポイ捨てwの表現
これにも同感!
BL界での女性の扱いったら…少年マンガのエロオンリー扱いとはまた違ったやるせなさを感じます(笑)
だからこそ、女性の存在も必然のBLにあたった時は嬉しいよね♪


>英田さんのハード系
ごめ〜ん、正確には「夜が蘇る」シリーズでした。
2巻表紙のキョーレツインパクトでついこっちのタイトルが脳内に刻まれちゃって(笑)

「夜が蘇る」
「夜に赦される」
「夜に咲き誇る」の3部作で完結です。

1巻目は出版自体は「エス」より遅いんですが、たしか投稿作を全面改稿した作品で、実質デビュー作に近いハズ。
同じ世界観、同じ路線で、こういう極端な振り幅の作品を書かれる方、他に思い当たらない。というのが読み比べをオススメした理由です。

ただ、表紙が、ね。さすがプOチナ(笑)
comment by: miru-ha | 2009/12/09 21:02
Y様ごめんなさい〜っ!

上のわにこさんへのコメントでも書きましたが「夜に赦される」は3部作でして、

「夜が蘇る」
「夜に赦される」
「夜に咲き誇る」
で完結です。2作目のタイトルだけお伝えしてしまいました、申し訳ないです…!

今、手元に本がない(奥にしまわれていてすぐに出せない)ので記憶を頼りにご案内しますと、「エス」シリーズと同時期ぐらいにプラOナ文庫から年1冊ペースで発刊されてまして、1巻目は上のコメントでも書きましたように投稿作(というか同人作)を改稿出版した作品だったと思います。
なので1巻目と2巻目は発刊間隔は1年ほどでも書いた時期はかなりの間がある、お若い頃の作品(のハズ)なのです。

だから作品完成度としては「エス」には遠く及ばないのですけども(特に後半が失速、続編は蛇足と評された事もある)、でもこの結末はアングラBL界では異色、ここまで書いた意味を考えると私は3部作で良かったかな、と思うのです。
で、読み比べをオススメしたのは「エス」シリーズと「夜が〜」続編をほぼ同時に脳内展開していたであろう作家様が、この2作のカプの選択を通じて伝えたかったメッセージは多分一緒かなあ、と。

そのメッセージだけをじっくり煮詰めて取り組んだのが「恋ひめやも」の執筆動機の幾ばくかではないか、と私が思っただけで、作品が全部リンク作のように繋がっているわけではないのです。

言葉と調べが足りなくて、本当に申し訳ありませんでした。
…といいつつ、ここも記憶だけで書いてますので執筆時期などが間違っていたらごめんなさい〜っ(大汗)
comment by: miru-ha | 2009/12/11 00:55

Leave a comment










TrackBack URL

http://imeson-bl.jugem.jp/trackback/334

TrackBacks

恋ひめやも/英田サキ ill.小山田あみ
BL初心者の今だから大きな声で言える。英田サキ作品を読んだ事がなーーい!積んでるのなら、シリーズまるっと二つとかあるんですが、評判が良ければ良いほど勿体無くて後回しにしてしまう悪い癖です。ってことで、これが初英田作品となりました。恋ひめやも (キャラ文庫
trackback by: 北の主腐から | 2009/12/08 12:06 PM