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水城せとな「俎上の鯉は二度跳ねる」に寄せて

 本日の「日曜コミックDAY」はもはや私などが語るもおこがましい、マンガ界の伝説となるだろう名コミック「俎上の鯉は二度跳ねる」を、勇気を持って取り上げる。
なにぶん歯応えあり過ぎて、がっつり取り組まないと表現しきれそうにないので、文体含めマジガチモードで語る事を最初にお断りしておく。

  

   

「マンガもここまできたかあ…」


読後最初の感想はこれだ。
1作目「窮鼠はチーズの夢を見る」は、望んで窮鼠となるダメ男が追い詰められても夢を見るだけで、猫を噛むどころか見ようともしない諦めの良さというか、やる気の無さに唖然としたものの、それを示すだけで解決も結末もないストーリーに、一体何が面白いのかと正直不満だった。
少女マンガ(しかもレディコミ)にゲイを真っ向から取り上げた事だけで喜ぶと思うのか、マンガ愛好家をなめんなよと。
続きがケータイで連載されていたのも知っているが、どうせゲイのラブラブ後日談だろうと思っていたし(ある意味当たっている)、需要が少ないから同人誌的発想でケータイコミックなのかと思っていたのだ。
それらの思惑は今作で見事に裏切られた。水城せとなはそんな甘い人間ではなかった。作者はここにたどり着くためにずっと描き続けていたのか。

ここで描かれるのは男女を超えて「人を恋う」業だ。徹底的にそれ一点を深く深く掘り下げて辿りつくのは、命がけで恋をするのではなく、命を賭けなければ本当の恋ではないと言われているような狂気にも似た恋愛至上の信念だ。
本来、今ヶ瀬の様な同性愛者なら必ず考えるであろう自己性癖への疑問、嫌悪、葛藤、孤独などはほとんど描かれない。
今ヶ瀬はそれらをみな既に消化しており、もはや悩みではないからだ。
対する恭一はこれから悩む事になるのだが、彼の悩みは初めて好きだと思える「人」がたまたま男だったがために発生した悩みで、同性愛自体に悩んでいるのとは少々事情が違う。

ここが作者のすごいところだ。同性愛が必然でありながら同性愛自体は大きな問題にせずあくまで「人」を恋う心を徹底的に追う。男性にも女性にも支持されるのは当然だろう。


同性愛はすべての生物がデフォで持つ子孫繁栄の生殖本能を否定して成り立つ、純粋に「人」を恋うという意味で「知」を持つ「人」だけが成し得る愛の形と思う。
もっともこれは同性愛の美しい部分だけを見ているに過ぎないのだが、そういった意味では本書も同様だ。しかし、これはマンガ。そこだけ見ていて何が悪い、ってところか。
作者は繊細で強い人だ。


ここまで描かれた。
受け止めた。
そして思い出す。マンガの美しい散華とは違うもう一つの物語を。

それは中山可穂「白い薔薇の淵まで」だ。
これは小説だが、ジャン・ジュネの再来と言われる新進気鋭の女流作家「塁」と、普通のOL「わたし」との激しい同性間の愛の記録である。
この作品は多分に作者の姿が自己投影されている。作者は同性愛者であることを公言しており、そのカミングアウトに伴う社会的制裁とも言える偏見の中を1人戦ってきた女性だからだ。

「マンガもここまで来たかあ…」とは、今作を読んだ時この小説が頭に浮かんだからだ。
この二つの作品は全く同じテーマの陰と陽。どちらの作品からも同じ声が聞こえる。

異性だの同性だのと区別することが本当に必要なのか。子孫を成せる愛でなければ「是」と言えないのか。ならば初めから身体的に不妊である男女の恋愛は意味ないものなのか。はっきり答えられるものがいれば教えてくれ、と作者は作品を通じて問いかけているように思えてならない。
そしておそらく誰もこの問いに答えられない。考え始めたら今の自分が揺らぐからだ。
焦りにも似た感動は当然だ。もう囚われている。


それぞれの作品で迎える結末の違いは、作者が同性愛者か否かという違いもあるが、マンガと小説という媒体の違いのせいでもあるだろう。マンガであることの意義、小説であることの意義を痛感する。

どちらも読んで良かった。どちらも好きで良かった。

「読む」事が好きで良かった。


この気持ちを書きとめる場所があって、良かった。








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「黒薔薇アリス」水城せとな
「孤島の鬼」江戸川乱歩〜?一般小説における同性愛
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Comments

管理者の承認待ちコメントです。
comment by: - | 2009/06/08 18:23
>Aさん、こんにちは。
細かいところまで読んで下さってありがとうございます。

これは時間をおいて読むと赤面ものだろうな、と我ながら失笑です。
でも、Aさんのようのようなお言葉がいただけるのなら本音晒したかいがあります。温かいコメント本当にうれしかったです。

「書くこと」は私も上手く出来ないです〜っ!
でも漠然とした何かに形を与える作業が好きだから、試す眇めつ挑戦してるって感じかな?

私も、我が意を得たり!な感想拝見すると握手して回りたくなりますから、やっぱりお仲間ですね。

comment by: miru-ha | 2009/06/09 14:39
>Mさん、初めまして。
拍手コメントありがとうございました。

何やらものすごく褒めていただいてあちこちコソバユイです。
少しでも共感していただけるところがあったのなら、書いたかいがあります。本当にありがとうございます。

どうぞ、また遊びに来て下さいませ♪
comment by: miru-ha | 2009/06/09 14:43
>cookieさん
初めまして、コメントありがとうございます。
感動だなんて、うわ、テレマス///

「白い薔薇の淵まで」は山本周五郎賞も取っている作者の代表作です。記事で書いたように自己投影されてる部分がありますのでこの方の作品はほぼレズビアンを扱っています。
でも、これが一番イイと思うんです…。
読まれましたら是非感想聞かせて下さいませ。

実は私も書きました、というか不器用なんで小説まとめてからじゃないと「俎上〜」に行けなかったんです。おかげで時間かかりました…。
comment by: miru-ha | 2009/06/09 14:53

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いまさら桜とピンクもないだろう、ということで、先回りして梅雨+夏バージョンに変更しました。壁紙が微妙に気に入らないのでまた変わるかもです。 さて、ちょっと珍しいことに昨日に引き続き、 3年ぶりの続編感想となる『俎上〜』です。 前巻の『窮鼠〜』のときもそう
trackback by: ゲイ&腐男子のBL読書ブログ | 2009/08/06 12:47 AM